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「あの〜、お隣りいいですか?」
パンツスーツを着たスラっと背の高い女性が佐々木に話しかけてきた。
「あっ、はぃ」
小さく応えるとその女性が佐々木の顔を覗き込む。
「あの〜大変失礼なのですが、あなたもうすぐ死にますよね?」
「、、、、」
「やっぱり!私こういう者でして」
びっくりして彼女が差し出した名刺に目をやると[走馬灯プランニング]と書いてある。
「なんなんですか!!」
ここでやっと我に帰り声が大きくなった佐々木は彼女を睨み付けたが満面の笑みで見返してくる。
「ごめんなさい、そんなに怒らないでください。私はあなたの最期の時を素晴らしく幸せにしたいのです。走馬灯ってご存知ですか?」
彼女は走馬灯の説明を始め、佐々木はインチキ臭い宗教の勧誘だろうと話半分に貧乏ゆすりをしながら嫌々相槌を打つ。
「それで、予定日はいつ頃?」
「、、はっ?」
また彼女を睨んでしまうが、動じることなく優しく微笑みかけてくる。
「予定日です、死亡予定日」
「なんなんですか!?ふざけてるんですか?出産予定日みたいに明るく聞かないでください。今俺はかなり落ち込んでいて色々考えなくちゃいけない事ばかりでこの先どうしたらいいかと、もう最悪なんですよ!」
佐々木は今までのイラつきを全て吐き出し早口で畳み掛ける。
「ええ、そうお見受けしたので声をかけさせて頂きました」
やけに落ち着いた物言いにさらに腹が立ち再度睨む様に舌打ちをしてから立ち上がる。
だいぶ薄暗くなった広い芝生の真ん中を突っ切って出口へと急ぐ。
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