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佐々木は電車に揺られながらまだ苛立ちが収まりきらず貧乏ゆすりが大きくなっている。
あの女は一体何者だったんだ。腹が立つ。
隣に座っている小太りなおばさんに貧乏ゆすりの振動が伝わってしまうのか、チラチラと横目で見てきやがる。わざとらしく咳払いなんかしてきやがって、さらに振動が酷くなるだけだ。
絶対謝りはしないと佐々木は強く思う。
こんなおばさんにどう思われようとどうせあと半年もしたらこの世からいなくなるんだ。
おばさんの視線を堂々と感じながらいつもの駅で電車を降り、いつものコンビニでいつもの弁当を買う。
ただいつもと違うのは発泡酒ではなくビールを2本買ったこと。しかも350ml缶ではなく500ml缶だ。
小さな抵抗といったところだが貧乏性の佐々木には目一杯の贅沢だった。
「どうせあと半年の命だ、節約なんて必要ない。
あるだけの金を使いきってやる。」
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