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「あのっ!待ってください!」
慌ただしい加藤の声が佐々木を背中から呼び止める。
「色々食べたくなっちゃって買いすぎちゃったんでよかったらこれ食べてください。1日に必要な野菜の半分が取れるっていうサラダです」
「、、、いらないです」
無愛想に佐々木は答える。
「でもお蕎麦だけじゃ」
「別に今から野菜食べたって健康になれる訳じゃないし、俺の癌が治る訳じゃないんで。もうすぐ死ぬんです、もうどうだっていいでしょ」
佐々木はまた面倒臭そうにそう言うと、加藤は一切顔色を変えず近寄ってきてサラダを強引に佐々木の手に持たせる。
「そうですね。サラダを食べて病気が治ったら医者も薬もいらないですもんね。でも私ももうすぐ死ぬかもしれないです」
「えっ?」
佐々木は思わず少し大きな声を出し、もしかして同じ癌なのではないかと少し期待してしまう。
「だって、コンビニの帰り道あそこの横断歩道を渡っている時、居眠り運転をしたトラックが突っ込んできてひかれてしまうんです。即死です」
「は?」
「という可能性だってあるって事です」
「ああ、、」
「いつ死ぬか、どうやって死ぬかなんて誰もわからないんですよ。
癌のあなたが癌で命を落とす前に、今日無差別殺人事件に巻き込まれて死んでしまうかもしれない」
「そんな馬鹿なこと、、、」
「死はいつもすぐそばにあるんです。だから準備が必要なんです。幸せに死ねるように。
私加藤って言います。お名前伺ってもいいですか?」
「あっ、え…佐々木、、」
加藤はまた名刺を差し出し強引に手に握らせ、いつでも電話下さいと言って走って行ってしまった。
なんなんだあの女は、、、
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