6人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
彼岸花の花言葉
春樹は気がつくと彼岸花の咲き乱れる土手にいた。なぜ彼岸花を自分は見に来たのか、なぜ自分はここにいるのか、自分でもよく分からないま時間が過ぎた。
あたりを探索していると彼岸花の方から音が聞こえた。春樹が花のほうに目をやると1人の女性が畑の真ん中に立っていた。女性は麦わら帽子を被り白いワンピースを着ていた。
(まさか幽霊か)
春樹は霊の存在など信じてはいないがこの時ばかりは女性は幽霊じゃないかと疑った。それもそのはずさっきまでこの辺りには誰もいなかったのである。
こんなに彼岸花が咲いているのにもかかわらず観光客1人いないのである。
(逃げた方がいいのかもしれないな)
春樹がゆっくりと歩きだそうとすると女性は畑の中を進みはるきに近づいてきた。
「ねぇ、あなたも彼岸花が好きなの」
女性が聞いてきた、美しい声だった。
髪と帽子で顔は見えないが春樹は女性に対する恐怖心が薄れていった。
「いや、実はよく分からないんです。自分がこの花が好きなのか、なぜここにいるのか」
春樹がそう答えると女性はクスリと笑い、
「そうなの……覚えてないのね」
小さな声でそう呟くと女性は春樹にどんどん近づいてきた。
「じゃあ、覚えてないのね、彼岸花の花言葉も……」
女性がそう呟くと急に強い風が吹き春樹は目が痛くなり目を瞑った。
目を開けると女性はいなくなっていた。
春樹の手には一輪の彼岸花が握られていた。
最初のコメントを投稿しよう!