眠りの王子

3/4
前へ
/46ページ
次へ
 「まさか告白された日に告白して振られちゃうなんて」 真理が冗談交じりに言った。 「でも、なんで谷岡は俺が好きなんだ」 真理に聞いた。 「姫野くんには中学の時から委員会とかでよく助けて貰ってたし、それでね、中2の時から好きだったの。でも、なかなか勇気が出なくて、3年生の時は受験で忙しかったし、気がついたら高二になってたの」 「そうだったんだな」 真理は中学の頃から春樹のことが好きだったのだ。 (もし中学の時に告白してたら、恋人になれていたのか) 春樹は少し過去の自分を恨んだ。 (でもなぜだ。なぜ俺は谷岡のことが、いやそれだけじゃない、元々惚れやすい俺がなぜ高校に入ってから誰にも心を動かされないのか) 春樹は考えた。  そして春樹は気がついた。 あのいつも見ている病院の一室、あの部屋を見ている時の自分の気持ちに。  あの病室を見ている時の気持ち、あれは以前真理に抱いていた気持ちと同じだと。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加