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「ねぇ、いいと思ってんの?こんなことして」 エレベーターの中。 あたしは初対面の男の人に壁ドンをされている。 「は?何の話ですか?」 そもそも「いいと思ってんの?」って聞きたいのはこっちだ。 なんで初対面で壁ドンなんてしてきてるんだって話。 「俺の隣の家から出てきたよね?」 「はぁ.......」 たしかに、あたしがドアを開けると同時に彼も隣の家から出てきた。 「単身赴任だからってこんなことしてると、いまに痛い目見るよ?」 背の高い彼に見下されたように言われて、ハッとなる。 「.......っ、あなたには関係ないでしょ」 「まぁ、隣の人カッコイイもんね」 「そりゃ、カッコイイですよ」 一目惚れだった。 彼はバイト先に新しい店長としてやってきた社員さんで。 こんなカッコイイ人見たことないってくらいヤバくて、好奇心旺盛だったあたしのアピールは出会ってすぐに始まった。 こんなにカッコイイ人に出会ったことなくて、いままでは好きだと思ってもアピールなんてしてこなかったのにこの時は違った。 だから、運命だと思ったのに。 「俺さ、奥さんいるんだ」 唯一の失敗はコトを済ませてから知った事実。 だって、指輪もなにもつけてないんだもん知るわけないじゃない。 「でも、莉子のことが好きだよ」 その言葉ひとつで、そんな事実どうでもよくなったんだ。 あたしの事を好きでいてくれるなら、もうなんだってよかった。 だって、あたしが彼を好きだから。
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