69人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、いいと思ってんの?こんなことして」
エレベーターの中。
あたしは初対面の男の人に壁ドンをされている。
「は?何の話ですか?」
そもそも「いいと思ってんの?」って聞きたいのはこっちだ。
なんで初対面で壁ドンなんてしてきてるんだって話。
「俺の隣の家から出てきたよね?」
「はぁ.......」
たしかに、あたしがドアを開けると同時に彼も隣の家から出てきた。
「単身赴任だからってこんなことしてると、いまに痛い目見るよ?」
背の高い彼に見下されたように言われて、ハッとなる。
「.......っ、あなたには関係ないでしょ」
「まぁ、隣の人カッコイイもんね」
「そりゃ、カッコイイですよ」
一目惚れだった。
彼はバイト先に新しい店長としてやってきた社員さんで。
こんなカッコイイ人見たことないってくらいヤバくて、好奇心旺盛だったあたしのアピールは出会ってすぐに始まった。
こんなにカッコイイ人に出会ったことなくて、いままでは好きだと思ってもアピールなんてしてこなかったのにこの時は違った。
だから、運命だと思ったのに。
「俺さ、奥さんいるんだ」
唯一の失敗はコトを済ませてから知った事実。
だって、指輪もなにもつけてないんだもん知るわけないじゃない。
「でも、莉子のことが好きだよ」
その言葉ひとつで、そんな事実どうでもよくなったんだ。
あたしの事を好きでいてくれるなら、もうなんだってよかった。
だって、あたしが彼を好きだから。
最初のコメントを投稿しよう!