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「はは、逃げようとしてんの?」
飛び降りたハズだったのに後ろからぐいっと引っ張られて、あたしの足はとまった。
「オジサンのくせに足速........」
あたしは陸上部だから足の速さには自信があったのに、この人はいとも簡単にあたしを捉えた。
「オジサンー?」
「高校生からみたらオジサンです」
「でも、君が好きな人と俺は同い年はらしいよ?」
「じゃあ26歳........やっぱりオジサンじゃん」
店長の事はオジサンだなんて思ったことないけど、この人はさっきから余計なことばかり言ってくる嫌味なオジサンだ。
「君ね、彼にはそんなふうに思わないくせに」
「当たり前じゃないですか」
「じゃあ、同じ年の俺にもオジサンなんて言わないこと。わかった?」
ツンとあたしの唇に人差し指をのせる。
「わかりました........!でも、名前とか知らないし」
そもそももう会うこともないだろうから、聞く必要もない。
「浅見(あさみ)って言うから。じゃ、俺これから仕事だから」
聞く必要もない名前を告げられ満足気に彼は去っていった。
「なんだったんだろう........。もう会うこともないかもしれないのに」
今日はたまたまあの人とあたしが家から出てくる時間が重なっただけ。
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