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「あのね浩介」
「ん?」
「やっぱりいい」
弁償するって速水さまと約束したんだもの。無関係な浩介を巻き込むわけにはいかない。
「俺には言えない事か?」
怪訝そうに眉をしかめ、刺のある声が返ってきた。
「そうじゃない」
ぶんぶんと首を横に振った。
嘘を付いても、浩介の機嫌がますます悪くなるだけ。正直に話した。
「ふ~ん」
カレイの身を口に運びながら、むすっとしてしばらくの間、黙り込んでしまった。
「なっち、こうしないか?ちょっとした知り合いが銀座一丁目でカフェーを経営している。そこで働かせてもらったらどうだ?俺が頼んでやる」
「あっ、でも・・・・」
高さまと充さま、幼い二人を屋敷に置いていくなど出来ない。
「高と充の面倒は俺がみる。もし俺がいないときは玄さんや、奥さんに頼む、これで不服はないだろう」
1度言い出したら言うことを聞かない頑固者。僕の性格は、浩介が一番理解している。
「大和撫子目当てにした、欧州や米国の漫遊客相手だが、まぁ、言葉が通じなくても愛嬌さえあれば何とか大丈夫だ」
「大和撫子って・・・・・」
「なっちの女の子の姿、すごく可愛いから、絶対にバレないよ。本当は、誰にも見せたくないけど」
「浩介・・・・・」
微かに熱を帯びた眼差しで見詰められて。逆上せたように頬が熱くなった。
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