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私は腕時計を見る。 普段ならバレー部に行っている時間。私は何をしているのだろう。 「そういえば鵜飼って……あれ、なんだか可哀想だよね」 「僕はそうは思わない」 ……へいへいーっと。 「……何で鵜飼なん?」 少しの静寂の後、彼から質問してきた。 今日の彼はよく喋る。 「出身が岐阜だから。おじいちゃんと見に行った記憶があって。船に乗って。えっとなんでだったかなぁ」 まずい、早口だ。 彼からの質問にテンションが上がってしまっている。 「あそう」 と彼が言った。 何だこいつ。 「何を思って描いてるの、この絵は」と私。 「言わせるのか?」と彼。 「じゃあ考えるわ。溢れ出る活力。いや、儚さかなぁ」 「鮎の語源を知ってるのか?」 と、彼が振り向いた。 そんなにエネルギーのある言葉だったか?今の。 「いや、知らんけど」 「あそう。そりゃよかったよ」 「……なんか、君。鮎みたいなやつだな」 私の言葉に彼はポカンとする。 「何だぁ、それ?」 「いや、私も分からんが?」 終
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