0人が本棚に入れています
本棚に追加
私は腕時計を見る。
普段ならバレー部に行っている時間。私は何をしているのだろう。
「そういえば鵜飼って……あれ、なんだか可哀想だよね」
「僕はそうは思わない」
……へいへいーっと。
「……何で鵜飼なん?」
少しの静寂の後、彼から質問してきた。
今日の彼はよく喋る。
「出身が岐阜だから。おじいちゃんと見に行った記憶があって。船に乗って。えっとなんでだったかなぁ」
まずい、早口だ。
彼からの質問にテンションが上がってしまっている。
「あそう」
と彼が言った。
何だこいつ。
「何を思って描いてるの、この絵は」と私。
「言わせるのか?」と彼。
「じゃあ考えるわ。溢れ出る活力。いや、儚さかなぁ」
「鮎の語源を知ってるのか?」
と、彼が振り向いた。
そんなにエネルギーのある言葉だったか?今の。
「いや、知らんけど」
「あそう。そりゃよかったよ」
「……なんか、君。鮎みたいなやつだな」
私の言葉に彼はポカンとする。
「何だぁ、それ?」
「いや、私も分からんが?」
終
最初のコメントを投稿しよう!