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告白
ボケ老人もとい、雨の国の王様に出会ってそろそろ一ヶ月立つ。
私は部活動的なノリで、毎日学校が終わったら雨の国に行くようになっていた。
あそこは雨しか降らない雨の国だ。例え外が晴れていても、あの空間だけには必ず雨が降っている。
仕組みは分からないし、分かりたくもない。あそこは日本じゃない秘密の国で、一年中やまない雨が降っている。理由なんかそれで十分だ。
罪なき人が死んでいくような戦争は無いし、食べるのに困る飢饉も無い。そんな平穏な時間がいつまでも続くと、私と王様は思っていた。
少なからず今日まではそう思い込んでいた。
「ツジモト。ワシ、そろそろ死ぬんじゃ」
雨の国の端っこ。王様特製の畑の中で、私と一緒に土をいじっているとき、王様は突然、そう言った。
「またまた、冗談はよしてくださいよ」
軽い冗談と思った私は手を止めずに、こないだ植えたトマトの苗の剪定に取りかかった。苗は小ぶりな実を付けている。
「本当じゃあツジモト。わしはもうすぐ死ぬ」
「え……」
とても冗談とは思えない王様の真剣な声色に、私の手は自然と止まった。頬に冷たい汗が一筋流れる。
「本当なんですか……今の話」
「ああ、本当じゃ」
石で殴られたような衝撃が、私の頭を襲う。余りにも衝撃的な老人の告白に、私は力なくその場に座り込んでしまった。
「この国の真実を話そう。ついてきておくれ」
へたれこんだ私に手を差しのべることもせず、冷酷にも王様は、巨木の方に足を進めて行った。
「あ、ちょっと待って!」
私の声は王様に届かない。王様は今まで見たことがないようなしっかりとした足取りで、巨木に向かって行っている。
「何なのよ、もう」
そう小さく呟きながら、私は立ち上がった。腰の位置に何だか生温い土の感触を感じるが、今はそれどころでは無い。
さっきまで力が抜けていた太ももに力を入れて、私は王様の後を追った。
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