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マスターが言ったように外ではいつの間にか雨は上がり、日差しが出ていた。
私は先程までの気持ちは無くなり、部長と暫く話していた。
「娘が最近、お菓子作りにハマっていてね。でも私はお菓子作りは全くセンスが無いようで...」
「宜しければ今度私が娘さんとお菓子作りをご一緒しても?」
「それは助かるよ、娘も喜ぶだろう」
部長は優しい父親の顔になっていた。
「あっ、雨も止んだしそろそろ会社に戻ります」
「そうだな、私も戻らねば。スミス君、さっきの事は会社の人間には内緒だよ。勿論、君も今まで通り私の事は嫌な上司でいてくれよ」
コールマン部長は似合わないウインクをした。
私は「はい」と約束をした。
口止め料なのか、部長がコーヒーをご馳走してくれた。
私は誰にも部長の奥さんの事を話さなかった。
私も会社では何も変わらない。
部長の事はやっぱり嫌いだ。
そして、不思議な事に私はあの店のコーヒーの味が忘れられずもう一度行ったが、カフェがあった場所には何も無かったのだ。
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