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お空のずっとずっと上の方で神様達は毎日元気に働いています。
魂の記憶を元に一人一人の人間の人生プログラミングをするのが神様のお仕事なのですが、ほんの些細なミスでも、その人間の人生は神様の思惑とは違う方向へ進んでしまうことがあるのですから、とても重要なお仕事です。
そのため神様になれるのは特別優秀な方ばかりなのですが、その中に、ちょっとばかり天然な…影で他の神様方から「おとぼけ神様」と呼ばれている神様がいらっしゃいました。
『どうですかな、神様。
今度は順調ですかな?』
『おお、これは神様。
順調ですとも…今度は何一つミスはありません。
よろしければ、今、担当している者をご覧になりますかな?』
『ええ、ぜひ拝見させていただきましょう。』
『どうぞ、どうぞ。』
少し天然な神様はそう言うと、手に持った杖で地面をこつんと叩きました。
すると、そこからじわじわと水が噴き出し、神様の足元に水溜りのようなものが出来ました。
やがて、染み出す水が止まって広がる波紋がおさまると、鏡のような水面に一人の青年の姿が映し出されました。
はちまきの中央と背中に施されたピンクの桃の刺繍がセンスの悪さを感じさせましたが、それ以外はまともです。
*
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『あれが現在担当しておる桃太郎なる青年ですが、プログラムはばっちりです!
ちゃんと桃の中にセットして、洗濯婆さんに拾わせましたし、ほれ、あの通り、桃太郎はとても順調に成長しておりますぞ。
とてもまっすぐで勇敢な性格に育ったため、桃太郎は今から悪い鬼達を退治しに鬼が島に行くのです。』
『なるほど…
確かに、いさましい青年のように見えますな。』
その言葉の裏には、「見た目はそう見えるが中身はどんなもんだか…」という含みがありましたが、天然な神様はそんなことには気付きません。
二人が桃太郎の様子を見ていると、どこからかがしゃんがしゃんとおかしな金属音が聞こえてきました。
桃太郎もその音に気付き、後ろを振り向くと、なにやら軽い金属のものが奇妙な動きをして近付いて来ているのです。
(…なんだろう?)
普通の神様は、目を凝らし、そのおかしなものをみつめました。
軽そうなパイプ状の骨組みを持つそれは、広がったかと思うと畳まれて倒れ、また起きあがって広がって畳まれるという動作を繰り返しながら前に進んでいます。
桃太郎もその面妖な外見と動きに戸惑い、思わず腰の剣を引き抜きました。
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