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今日は雨だ。しとしとと静かに降る雨でじっとりと蒸した空気が肌にべたつく。梅雨に入る前からこんな天気が続いている。朝練があるので早く家を出た。近所に住む沙也ちゃんもバレー部で朝が早い。夏生先輩は美術部なので登校時間が違う。同じ電車に乗りたいが仕方ない。住宅街の端まで行くと緑と赤のチェックのスカートが見えた。透明な傘をさしている沙也ちゃんだ。
「待った?」
「ううん。雨、やまないね」
「ああ、梅雨だし仕方ないよ」
俺は沙也ちゃんと駅まで歩きながら昨日観たお笑い番組の話をした。俺も沙也ちゃんもお笑いが好きだ。
「テレビばかり観て、勉強を殆どしなかったー」
沙也ちゃんは反省している風でもなく可笑しそうに話す。
「俺もだよ、数学ヤバい。最近は先生の言ってることが分からない」
「数学って急に難しくなったよねー」
沙也ちゃんは笑顔を崩さず俺を見上げた。俺は身長が180センチあるので背の高さが20センチくらい違う。
「ああ、来年は受験生だろ、それまでに少しは学力をつけないと、親が困る」
「そうだよね。でも咲夜くんはスポーツが出来るからいいじゃん。スポーツで大学に入学することだって可能でしょ」
「いや、それは俺が入っているバスケ部が活躍した場合だよ。バスケ部は残念ながら強くない」
「そう、思うようにはいかないね」
だらだら喋りながら歩いていると駅に着いた。高校はここから40分ほど掛かる場所にある。
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