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「そうね、こんな事をされてもね……これから、どうしたらいいかしら?」
横井さんからボールペンを受け取って、それをじっと見つめる。友人から誕生日プレゼントとしてもらった、小さな花柄のボールペン。
これをごみ箱に捨てられたことは本当に悔しかった。
「ここはやっぱり、彼氏の御堂さんに相談しておきますか?」
「横井さん、私と御堂はそんな特別な男女の関係では無いのよ?」
どうやら横井さんの中では私と御堂は既にカップルになっていたらしい。私達って、そんなに親しそうに見えるのだろうか?
「……そうなんですか、でも少なくとも御堂さんは主任を特別扱いしていますよね。あの人いつも主任を見てますから」
そんな横井さんの言葉に、じわっと顔が熱くなっていくのが分かる。彼女から気付かれるほど、御堂は私の事ばかり見ているってことなの?
「こんな所で二人、コソコソ何をしてるんだ? そろそろ朝礼を始めたいから、デスクに戻ってくれるかな」
コンコンと扉をノックされて、ドアの向こうから御堂の声が聞こえてくる。それは課長代理としての、御堂の話し方……
「御堂さん……すみませんでした。席に戻りましょう、横井さん」
鍵を開けて御堂に頭を下げると、横井さんと一緒に朝礼に参加する。朝礼中も御堂が私をジッと見ている、いつもの鋭い視線を感じるから。
……彼はきっとこの後で、横井さんと二人で何をしていたのかを問い詰めてくるだろう。
横井さんは絶対に御堂に相談するべきだというけれど、私はそんな風に都合よく彼に頼っていいのかと迷っていた。
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