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「紗綾はソファーに座ってテレビでも見ていろ」
そう言われてソファーにちょこんと腰かけた。御堂ともう少し話したかったから、あえてテレビはつけずに待っている。
この部屋にはテレビとソファー、他にはほとんど物はない。それはそうかもしれない、彼はまだここに来たばかりなのだから。
なんとなくソワソワして、私はソファーから立ち上がりこっそりキッチンを覗きに行く。黒の前掛けエプロンをしてフライパンで具材を炒めている御堂。
……どうしてだろう、この男は何もしても絵になるのだから腹が立つ。
火を止めた後、卵を冷蔵庫から出している。そんな何気ない動作一つにも見惚れてしまいそうで……料理をしてる男性ってこんなにかっこよく見えるものだっただろうか?
「そんな所から覗くくらいなら、堂々と見たらどうだ?」
御堂は私の方を見るとニヤリと笑って、私の手を強く引っ張った。引き寄せられキッチンと御堂の両腕に挟まれる様な形になる私。
「ちょっと御堂、危ないじゃない!」
「何がだ? 火はもう消しているし危ないことなんてないだろう? ほら紗綾、もっと俺に寄ってくれないと卵が割れないだろ」
御堂には私を後ろから抱きしめるような形で、そのまま料理を続けようとするから堪らない。
「私を離してくれれば、卵なんてすぐに割れるでしょう? ねえ、離してってば……」
「大人しくソファーに座るように言ったのに、チョロチョロしている紗綾が悪いんだろう? 俺の言う事をお前がちゃんと聞くように躾けているんだよ」
「わ、私はペットじゃないんだから!」
真っ赤になる私を見下ろしながら、御堂は面白そうに「クックックッ……」と笑っている。もう、凄く性格が悪いわ!
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