守りたいんだ

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「主任、ちょっとこっちに来てください」  そう言うと横井(よこい)さんは、普段使われず物置代わりになっている部屋の扉を開けた。言われた通り私が部屋の中に入ると、横井さんはそのドアを閉めて鍵までかけた。 「ねえ横井さん。私が御堂(みどう)と何かあったって、どうして分かるの?」  どうやら何か知っているらしい横井さん。もう二人きりになったので、私は素直に御堂の名前を出した。 「やっぱりそうなんですね。もう! ちゃんと気を付けてくださいね、って私言ったじゃないですか」 「えっと、私なりに気を付けたつもりだったんだけど……」  横井さんの忠告はちゃんと覚えている。だから昨日は休憩室であまり話さず、彼の部屋に行くことになったのだから。 「……多分ですけど、主任と御堂さんの行動をずっと見張っている女子社員たちがいるんだと思います。このボールペンも、その人達からの嫌がらせなんじゃないかと」 「御堂に憧れている女性社員達が「彼に近付くな」という意味でやってるって事……?」  それなら確かに納得出来る、御堂は女性から見てとても魅力的な男性だと思うから。  だからといって、私達を監視する必要まであるとは考えられないが。横井さんは間違いないと、頷いて。 「……きっとそうでしょうね、本当にくだらないですけど!」  横井さんはまっすぐな性格だから、こういう裏でコソコソするようなのをかなり嫌っている様子。  私の代わりに彼女が怒ってくれてるせいか、思ったほど怒りは湧いてこない。むしろ味方でいてくれる横井さんの存在に救われた気がしてて。
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