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だからと言ってダンマリを決め込めば、御堂は強引に口を割らせようとするだろう。それも困るので、申し訳ないが横井さんを口実にさせてもらうしかない。
「なにかしら? さっき横井さんと一緒にいたことなら、ちょっと彼女に頼まれて恋愛相談に乗っていただけ――」
「嘘をつくときだけ早口になる癖、変わってないな。朝からお前の様子がおかしい事に、俺が気付かないとでも思っているのか?」
嘘をつくとき早口になる? そんな事、今まで誰にも指摘されたこと無いのに。そんな子供の頃からの癖まで、貴方は憶えているの?
「私の様子がおかしかったら何だっていうの? それが御堂に何の関係があるのかしら」
……もし嫌がらせが御堂が関係しているのなら、こうやって話しているのも危ないのに。私だけならともかく、このままでは御堂まで嫌がらせを受けるかもしれない。
それもあって、私はわざと御堂を突き放すような言い方をする。
「関係ならあるだろ、俺は紗綾の上司で幼馴染だ。それに紗綾は俺にとってお前は特別な女性でもある。そんな相手の様子がおかしいのを放っておけなくて、いったい何が悪い?」
確かに御堂は上司で……大事な幼馴染よ。だから貴方までこの問題に巻き込みたくないんじゃない。
「御堂は……そうやって私の事を何でも聞きだしてどうしたいの? そうする事で、私の全てを支配すれば気が済むとでも?」
心配してくれている彼に対して、酷い言葉を言ってることはちゃんと分かってる。だけど――
「違う、支配したいとかじゃない。俺は紗綾を守れる立場の人間になりたいんだ」
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