仮面を脱いだ平凡男

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 高校2年の時、同級生だった百合菜と直太朗は、映画館で5年ぶりに再会した。今から8年前のことだった。不思議な巡り合わせと言うべき縁故で百合菜が直太朗の隣席に偶然座ったのだ。  直太朗は百合菜に直ぐに気づいたが、百合菜は直太朗にずっと気づかなかった。それ程、直太朗は元々目立たない存在で高校2年の時、百合菜は彼を気にも留めていなかったが、直太朗は彼女がいつも気になる存在だった。だから5年のブランクが空いても目敏く面影を見て取って気づけたのだ。  直太朗は映画を観ている間に、これは運命の導きだ、俺の平凡な人生にチャンスが訪れたんだ、このチャンスを逃してはならないという不退転の意志を固めて行った。だからエンドロールが始まると、後にも先にもこの時だけ彼は大仰に言えば、勇者になって百合菜が席を立つ前に声をかけた。
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