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「あの田中さんですよねえ。」
百合菜はびっくりして直太朗を見た。
「ええ、そうですけど・・・」
「僕ですよ。僕・・・高校2年の時に同級生だった・・・」
「あ、ああ」と百合菜はやっと、それも朧気に記憶の隅に思い出した。が、名前が出てこない。
「前川ですよ。覚えてないですか?」
「ああ、前川さんね、そうそう思い出したわ。」
「全く奇遇ですねえ・・・」
「ええ、これも何かの縁かしら。」
「そうですよ。折角こうして出会えたんですから此の儘、別れる手はないと言うか、勿体ないと言うか・・・」直太朗の執拗に迫る視線に縛られた格好の百合菜は、「そうですねえ」と答えるしかなかった。
「だからどうです、お茶しながら四方山話でもしませんか?」
百合菜は別に予定がなかったし、断る理由が見つからなかったし、断るのは悪いと思ったからOKの返事をして直太朗と喫茶店に行くことにした。
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