選ばれたのは?

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そんな僕が一ヵ月前、突然呼ばれたのだ。実家に届いた一通の手紙。そこに書かれた遊びの誘いと懐かしい名前。手紙を広げるとともに湧き上がった好奇心とノスタルジーに背中を押されて来てみれば、婚約者選びの中に入れられているのだから驚きだ。 何度か、辞退を願い出たことがある。それこそ、久々の再会を果たした一ヵ月前に本人に直接言っている。でも、いくら言っても御曹司が頑なに拒むものだから、結局最後まで残ってしまっている。 まあ、楽しかったからいいけれど…… この一ヵ月間、定期的にここにいる四人は集められた。他の三人は元々仲が良いからか、積極的に御曹司に話しかけていた。僕はそれを幸いにと、黙々と出された高級菓子や紅茶を堪能していた。 そういった日以外に数回、御曹司と二人で遊ぶこともあった。そのときはただ好きな小説や大学であった話をしたり、互いに行きたいところに付き合ったり。割と好き勝手にさせてもらっていたけれど、結果として、高校のときよりも御曹司と仲良くなった気がする。 それにしても、誰が選ばれるのだろうか。僕としては、婚約者として選ばれることなく、友人としてこれからも付き合っていきたいものだが。 それさえ叶えば正直、誰が選ばれてもいいな。 アンティーク調の時計の置き時計の細い針は、刻々と運命の時間へと近づいてきている。そこはかとなく抱き始めた緊張に深く座り直すと、僕は背もたれにそっと上半身を預ける。そうして通常よりも速い心音を聞くと、御曹司の答えを静かに待つことにした。
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