ビターフェイクチョコレート【コミカライズ原作】

３.フェイク

「何を言ってるの、辻村さんにお願いしたくて呼んだんだよ。良かったら、一般的なカタログも置いて行ってくれると助かるよ」

みりはカバンに手を入れカタログを出し、机の上に置いた。五種類のパンフレットを横に広げる。支配人と店長はそれぞれ視線を落とした。

「こちらが、パンフレットになります！　有難うございます」

「すぐパンフレットが揃うなんて、辻村さんは本当に熱心だねぇ。じゃあ、打ち合わせと見本料理を作る日を決めようか」

「はい、よろしくお願いします」

みりは立ち上がって頭を下げた。

　その後はオリジナル食品サンプルの作成過程についての打ち合わせ手順を説明した。納品までに、打ち合わせをし、店側に見本料理の作成を依頼する。そして、その作成の資料となる写真撮影を行い、料理の盛り付けや高さ、大きさを採寸し、記録する。その後、容器ごと料理を預かり、近くの工場もしくは作業所へ持ち込む。サンプル作成は二週間程度が目安であり、繁盛期は納品が伸びることを説明した。

「今の時期、四月下旬ですと、近くの工場はまだ繁盛期に入っていませんので、お約束の二週間程度で納品が出来ると思います」

みりの言葉に二人は頷いた。支配人が目尻にシワを寄せて、薄い髪を撫でながら言った。

「辻村さんに納品とディスプレイをお願いしたいんだがいいかな」

「はい、こちらこそ、よろしくお願いします」

店内に飾るタペストリーのオーダーも貰い、一号店で売り上げが伸びれば、二号店と三号店の物も追加でオーダーを加味する話でまとまった。