ビターフェイクチョコレート【コミカライズ原作】

４.フェイク

４、

　五月、連休明け最初の月曜日。五階のオフィスフロアでは、朝一番に販売促進部の営業成績について、発表があった。

一位は三波、二位は伊坂、みりが同着で四位は垂れ目の女――横澤――の順だった。

　営業成績が特に影響するのは一時金や奨励金だ。エリアマネージャーが月初めに各フロアに回り、社員の成績と開拓地域、店舗の把握を行う。部長はその業績をまとめ、マネージャーに報告する。

　藤崎が業績評も見ずに、好感しかない笑顔を浮かべ、爽やかな声で告げた。

「東海(しょうじ)エリアマネージャー、報告します。販売促進部の営業売り上げは三月より四月が伸びており、新規開拓も進んでいます。貸付サービスを行っている各店舗担当者へのアンケートも上々な返事をいただいており、中には貸付サービスをきっかけに、オリジナルの食品サンプルの作成、およびチラシやタペストリー、ポスターの注文も頂いております。アンケートの返事として、目立ったのが、貸付サービスの点検は月一回であるのにも関わらず、それ以上、店舗に来てくれるの事が嬉しい、店側も気づかないサンプルの汚れや季節のディスプレイの提案をしてくれて安心して任せることができる、などです」

恰幅のいいエリアマネージャーは藤崎部長の報告を聞いて満足そうに笑った。