如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 そして学校が終わると、  かれんはいつも、校門の外の壁に気だるげにもたれてわたしを待っている。わたしを見つけると、「よっ、お疲れ!」などと言って、こっちにむかって気さくに笑いかけ―― 「だれ?」「メルの知り合い?」  などと、学校の友達が不思議がるのも、かれんの方ではまるっきり無視。「今日は遅かったな。けっこう待ったぞ?」などと言ってわたしの腕を気安くつかんで、もう、ひとりで勝手に、どんどん駅の方まで歩いて行くし―― 「ねえ、昼間は何やって時間つぶしてるの?」  と、最初は聞いてみたりもしたのです。わたしが学校で過ごしている間、かれんがどこで何をしてるのか見当もつかなかったから。 「ま、それは色々だ。今日は少し、川西駅前のネットカフェでマンガを読んでおった。まだまだわたしがチェックしていない名作があれこれあるからな。あそこは良い場所だ。昼間に女子がひとりで入っても、特に何も言われないしな。」 「はあ、」 「あとは、そうだな、今回はまだ足を延ばしていないが、通常ならば、天気が良ければ万博動物園とか、行ったりもするな。」 「動物――園?」 「ああ。キリンとかシマウマとか、そんなのはどこにでもいそうな感じもするが―― いざ実物を間近で見ると、これはなかなか、飽きない。いろいろ予想外の面白い動きをする。あとはあれだな、個人的には『ナマケモノ』などが好みだ。あれは動きが少ないぶん、ずっと見ていて動いた時の感動が大きい。なかなか見所のある動物だ、あれは表情にも独特の愛嬌がある。」 「はあ、」 「あとは何気に、服部公園も好きなのだが。ただ、あそこはどうも警察の巡回が多い。何か聞かれると面倒だからな。今の季節は緑が綺麗でぜひ行きたくはあるが、あまり気軽には歩けない。そこは難点だな。ま、あそこに行くなら、職質を受けない週末が王道だ。」 「はあ、」
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