如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 まあとにかく。  とくになにか決まったプランがあるわけでもなく、その日その日で、かれんは適当にのらりくらりと過ごしているみたいでした。お金をあまり持ってないみたいだったから、お小遣いみたいな感じで、ある程度の交通費と飲食費を渡したりはしていたのですが―― まあでも、そんなに極端な無駄遣いもなく、かれんはわりと、つつましく地味に毎日過ごしてるみたいで―― 「最初の頃は、もちろん、もっといろいろ、遠くに出かけたりもしてみたものだ。サンゴの海が見たくてはるばる伊丹から飛行機で沖縄まで行ったりもしたな。」 「最初の頃? それっていつのこと?」 「最初は、最初だ。まだ死に戻りはじめて、回数が浅い頃、とでも言うべきか?」 「えーっと。。そこはちょっと意味、わかんない、けど――」 「当初は、そうだな、こんどまた死ぬ前に、もっといろいろ見てみたい。もっといろいろやっておきたいと。無駄にあがいてみたりもしたものだ。何かそれまでとまったく別の行動をとったらば、何か別の展開―― 自分が死なない未来が来たりなぞ、しないものかと―― そう思って、いろいろやった。あがいたものだ。もう二度と死にたくない。そう思って――」 「……ねえ、それってマジメな話? 冗談、よね?」 「ばか。冗談で、こんなつまらない話をするものか。冗談ならば、わたしはもっと面白い気の利いた寓話を捏造するだろう。わたしの創作能力を甘く見てはいけない。だが残念ながら、これは冗談でも何でもない。厳然たる事実。私にとっては実際、誠に残念な残酷な事実だからな。」 「……。。」 「そういえば、一時期は本当に、いろいろ焦って、あちこち男と寝てみたりもした。」 「?? 男と?? 何それ??」
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