如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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1  かれんが初めてやってきたのは、6月の下旬。  梅雨の合間の、ひさびさに朝から晴れた日、  窓から入る風がやがて来る夏の気配をこっそりと運んでくる、どこか気だるい午後。  午後のホームルームは終わって大半の生徒は下校し、教室の中に残っている生徒はまばらでした。四階の窓の外、ずっと足元のグラウンドでは、サッカー部の男子たちがはやくも練習を始めており――  そんな午後の教室の片隅で。  窓際の席、机に肘をついて窓の外を眺めながら、その少女は座っていました。 「あ、あの―― そこは―― わたしの――」 「ん?」  少女がこちらをふりかえりました。  長いまっすぐな黒髪が風にひるがえり、  はっとするくらい端正な顔立ち――  細くてまっすぐな眉、整った鼻、  黒と言うには少し色素の薄い、少し不思議なすみれ色をした目――  しかし、だけど――  着ている服が、明らかに変です。  淡いピンク系のカーディガン。ブルーのショートスカート。純白のカッターシャツに、赤と黒のチェックのタイ―― 明らかにうちの制服ではない。いったいどこの――
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