如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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6月25日  季節はずれの台風が接近中で、風の強い一日。なにか警報が出たとかで、学校は昼までで終わりました。家に戻るとかれんは部屋でひとりで少女マンガを熟読しており―― その午後は、外で雨が降りしきる中、ふたりでずっとマンガを読んで過ごしました。お風呂上りに、ふたりでヨーグルトプリンを食べた。 6月27日  夜、家で夕食の支度をしていると、急にかれんが言い出しました。  なあ橡原、このあと蛍を見に行かないか? と。 「蛍? どこへ?」 「なに、それほど遠くではない。ここの住宅街の裏を抜けると、スポーツ公園があるだろう? あそこの裏手の山だ。」 「あんなところに蛍? 聞いたことないけど――」 「穴場なのだ。地元民でも知っている者は少ない。」 「って、かれんはそれ、地元じゃないのに何で知ってるわけ?」 「何度も言わせるな。この街に戻ってくるのは二百二十二回目だ。つまりこの家に居候するのも二百二十二回目。不注意な地元連中よりは、よほど地域の細部まで知っている。」 「…二百二十二回目ねえ―― 蛍ねえ――」
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