如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 八十パーセントくらい信じないで、  まあでも、今夜とくに何かあるわけでもないから、ちょっとした夜の散歩も悪くはないかな、と。その程度の心構えで、いちおう虫よけを手足によく塗ってから、  ちょっぴり遅い夕飯のあと、かれんと二人で家を出ました。  なんだかまた雨が降りそうなじめっとした夜で、空には星も月も何も見えません。    住宅街の裏側、街路灯がともる緑地の散策路をずっと向こうまで突っ切って――  いちばん先の山際にあるのが、スポーツ公園。    昼間はここでよく地域の大学生がサッカーの練習をしてたりするけど、  この時間、日没をとっくに過ぎた今では、誰もひとりもいませんでした。  だだっぴろい芝生のグラウンドを二人でまっすぐつっきって、  ぐるりと巡らされた高いフェンスの裏側、  そこから裏の山にむけて登って行く細い踏み分け道を、  かれんはぐんぐん、ひとりで先に歩いて行きます。  わたしは持ってきた懐中電灯で足元を照らしながら、おそるおそるだったけど、  かれんの方は――   勝手知ったるというか、もうすっかり道を知ってるという感じで――
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