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正直に告白すると、
この時点でもまだわたしは、かれんの言葉を、本当のところでは信じていませんでした。
何度も死んで戻ってきたとか―― でも、かれんが寝てるときにこっそり触れてみたりもしたけれど、髪の手触りも、肌も、体のぬくもりも―― 何もかも私と同じ、普通も普通で―― いろいろ老成した変なしゃべり方をするけど、かといってなにか、この時間を何度も生きてきたと思えるような特別なこと―― たとえば大きな事件を予言するとか、毎日の天気をぴたりと言い当てるとか、わたしの行動を先取りして全部知っているとか―― そういうことは、いっさい何もなかったし――
ごくごく普通の(?)、でもたぶん、いろいろ家庭が難しくて、家出しちゃって、そしてちょっぴり(だいぶ?)虚言癖のある、でもたぶん、特に害のない、普通の子なんだろうと――
そんな程度にしか、そんなくらいに浅はかにしか、わたしは考えていなかったのです。
八月には父が海外から戻ってくるから、そしたらあらためて、かれんの今後のこととか、いろいろ、難しい話は、まとめてその時に話せば良いかと。その程度の認識で――
そんな程度の甘い認識で、わたしは毎日、過ごしていました。
一日一日が、普通に過ぎてゆく――
その、ごくごく普通のゆっくりとした時間の流れの中に、かれんもずっと、とどまっているものだと――
勝手にわたしは決めつけていました。思い込んでいました。
でもそんなものは、結局のところぜんぶわたしの、ひとりよがりな誤解にすぎず――
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