如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 橡原へ。  おわかれの手紙を、今ここに置いておく。  毎回いろいろ、別れの際には考えるのだが、  でもやはり、今回もこれが、いちばんスマート、  いちばん問題を起こさないやり方だろうと結論した。  だから手紙を置いておく。  おまえがこれを見つけるとき、わたしはもう、ここにはいないだろう。 「ここには」という言葉には、二重の意味がある。  おまえの家に、という意味。  そして、「もう、この世界には。」という、二つ目の意味も。  毎度のことではあるが、ここでもやはり、感謝を伝えたい。  感謝しているよ、橡原。心のいちばん、深いところからな。  居場所のないわたしに、今回もやっぱりおまえは、  とても居心地の良い、素敵な場所を用意してくれた。  お前はいつも、口ではいろいろ文句を言いながらも、  毎日きちんと、わたしが眠る場所、わたしが快適に過ごせる場所、  わたしがわたしとしてきちんと存在できる場所を、  毎日おまえは、わたしのために、ここに用意してくれたのだ。  感謝している。この感謝の気持ちは、本当のものだ。
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