如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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最初に死んだとき。  いや、最初にこちらに生き戻ったとき、と書くべきか。  強い雨の中、まったく事情がわからず、とにかく混乱した。  駅前の雑踏で、土砂降りの雨に打たれて。  だれもわたしに気など留めなかったし、  そこを彷徨うわたしは、彼らにとっては、いてもいなくとも、  そんなものは、彼らにとってはまったくどうでもいい、空気のような存在にすぎず――    わたしは行く場所もなく、帰る家もなく――  金もなく―― 持ち物もなく――  あるのは、身に着けているこの、いつもの制服――  それ以外にはわたしには、もう何も残っていなくて――    つらかったよ。あれはつらかった。  ある意味あれは、死そのものよりも残酷だ。  わたしはここに、生きているはずなのに、生きているはずなのに――  だがそこには何一つ、わたしが生きている証が存在しない――  誰もわたしを見ない。わたしはどこにも、行く当てがなく――
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