如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 かけよって、肩をゆすぶりました。  ほっぺたを、ぱちぱち、叩きました。  だけどどれだけ揺すっても――  どれだけどれだけ呼びかけても――  かれんは、もう、その目を開くことはなく――  わたしは冷たくなったかれんの体を、ギュッと、ギュッと、抱きしめました。  わたしの顔のすぐそばで――  その、固く閉じられた、もう二度と開かない小さな形のいい唇が、  かすかにどこか、わたしにむかって、まるで笑っているかのように――  飛び交う蛍たちが、  ただただ音もなく、どこまでも優雅に、繊細に――  まるでここでは何千年も昔から、  何も、何一つ、このままここで、何も何一つ起こらなかったかのように――  ただただ無心に、蛍はいつまでもいつまでも舞い続けてました。
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