如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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10  普段は静かな住宅街のはずれで少女が死んで発見されたことで、  そのあと地元ではちょっとした騒ぎになりました。テレビの取材もやってきて、ヘリコプターも飛んで、しばらくとても騒がしかったことは覚えています。第一発見者として、いろんな人に、あれこれいろいろ、訊かれたこも―― だけどそういうことは――  すべてが終わったそのあとでは、なんだかもう、どうでもいいことのように、記憶の隅の隅っこの方に、なんだかぼんやり靄に包まれて、なんとか記憶に残っている。ほんとにその程度です。わたしはなんだか、もう、力が抜けて、何をやってもどうでもよくて――    警察の方では、全国各地の家出人のリストの中から、該当しそうな少女を徹底的に洗ったみたいですが―― けっきょく、それらしい少女の記録は見つからず―― テレビの報道も、時間とともに、少なくなっていきました―― おそらく死因も、心臓発作か何か、とくに事件性のない、病死の範疇だろうと―― いろいろなことが曖昧なままで、事件は、やがて人々の記憶から薄れていきました。そしてまもなく夏が来ました。すっかり雨の季節は終わって、太陽が降りそそぐ、あの暑い季節が――
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