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でも、その夏のことも、今ではあまり、よく、覚えていません。
かれんがいなくなったあとでは――
わたしがふたたびひとりきりになった、そのあとでは――
なんだかすべては、ほんとにどうでも良い、あってもなくてもかまわない退屈な後日談みたいに、すべてが思えてしまいました――
街のどこを歩いても。
家で何をしていても。
わたしの心は、いつも必ず、そこに向かって戻って行きます――
蛍の光に包まれて、森の地面で冷たくなっていたかれん。
味気ない病院のベッドの上、無言で目を閉じて横たわるかれん。
数日後、身元不明者として葬儀もなしに火葬され、灰と煙になって消えて行ったかれん。
わたしはそして、最後の最後の、ほんとに最後まで、
かれんの言葉を、信じてあげられなかった。少しも信じてあげられなかった。
わたしはかれんが語った言葉の――
その、何一つも、わたしはほんとに、信じてあげられなくて――
そしてそのまま、夏も終わりました。
わたしは海にも、行きませんでした。
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