如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 でも、その夏のことも、今ではあまり、よく、覚えていません。    かれんがいなくなったあとでは――  わたしがふたたびひとりきりになった、そのあとでは――  なんだかすべては、ほんとにどうでも良い、あってもなくてもかまわない退屈な後日談みたいに、すべてが思えてしまいました――    街のどこを歩いても。  家で何をしていても。  わたしの心は、いつも必ず、そこに向かって戻って行きます――    蛍の光に包まれて、森の地面で冷たくなっていたかれん。    味気ない病院のベッドの上、無言で目を閉じて横たわるかれん。    数日後、身元不明者として葬儀もなしに火葬され、灰と煙になって消えて行ったかれん。  わたしはそして、最後の最後の、ほんとに最後まで、  かれんの言葉を、信じてあげられなかった。少しも信じてあげられなかった。  わたしはかれんが語った言葉の――  その、何一つも、わたしはほんとに、信じてあげられなくて――  そしてそのまま、夏も終わりました。  わたしは海にも、行きませんでした。
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