如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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 その日もまったく同じでした。  学園祭の準備が長引いて、もう日が暮れる頃に、ひとりで学校を出たわたしは――  いつものバス通りを、たいして何も考えず、てくてく歩いて――  暗くなりゆく街の通りには、あちこち、店の明かりがまぶしくともり始めて――  コスモスが一杯の空き地を通りすぎ、ドラッグストアの角をまがり、  そしてその、いつもの場所まで、戻ってきました。  川野瀬口駅の、南改札広場―― 「おーい。橡原!」  わたしはハッと顔を上げました。  それまで何か考えごとをしていて、  ぜんぜん何も、まわりを見てはいなかったのです。  だから少し、びっくりしました。  たしかに今、だれかが私の名前を呼んだ気が――
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