如月かれんは二百二十二回死ぬ。

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「ね、かれん、一緒に家、帰ろう。一緒にプリン、食べよう。なんだったら一緒にお風呂、入ってあげてもいいよ! 背中も流すよ!」 「いやいやいや。申し出はありがたいが。女ふたりで風呂に入る趣味は、今のところないのでな――」 「じゃ、とりあえず晩ごはん、食べよう。つくったげるよ。何がいい? やっぱりすき焼き? すき焼きね? ね?」 「まあ、そうだな。そこはやはり、きちんと押さえてしかるべきポイント、かもしれないな。うむ。そうだな。やはりそれだな。そこからだな、まずは。」  そう言ってかれんは、  なんだかちょっと恥ずかしそうに、ちょっぴり下を向いて、  ちらりと、わずかに、ちょっとだけ――    でも、とっても綺麗に、たぶんかれんは、笑ったのだと。  そう思います。きっとかれんは笑ったでしょう。  だからわたしも。  わたしもこたえて、笑いました。  それから思いきり、握りました。  かれんの、その、ピンクのカーディガンを着た細い腕。  それからその腕をぐいっと思いきり自分の方に引きよせて、  今度はかれんの体ぜんぶを、  ギュッと、ギュッと、力をこめて、またあらためて、抱きしめて――
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