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「そうだ。また忘れたのか?」
かれんは言って、ほんの少し悲しむように、両目をわずかに細めてこっちを見ました。
「いや、すなない。そうだな、むしろ覚えている方が異常か。お前とは、つい昨日まで―― ああ、これはあくまでわたしの体感的にその程度、という意味に過ぎないのだが―― まあ、とにかくほんの少し前まで、ずっと普通にこのように会話していた。そこからいきなりリセットされると、わかっていても、なかなかすぐには対応できなくてな――」
「そ、それって何? リセット?」
わたしは茫然として、訊きなおしました。なんだか頭がクラクラしてきます。
「まあ、なんだ。時間が巻き戻るというのか。あるいは一度過ごした時間を、まだ繰り返し、過ごしてしまうというか――」
「えっと。。それって何の話? ひょっとしてアニメとかの? 一時期はやった、よみがえりとか、時間遡行とか?」
「おお。理解が早い。」
かれんは驚いたように、ほう。と言ってこっちをマジメに見つめました。
「よくわかるな。さすがはわたしが友と認定した女だけはある。」
「え、ちょっと、何それ? 意味、わからないですけど――」
「まあしかし、特にアニメで流行っていたとか、そのような情報は初耳だ。流行っていたのか?」
そのあと、家まで、あじさいの咲く住宅街の路地を歩きながら――
少女が話した内容は、にわかには、とても、わたしには、
信じることが難しい話でした――
なんでも、今回、またここ、この街に戻ってくるのは二百二十二回目――
何度も死んでは、そのつど、ここに戻ってくる――
この街、この時、この季節――
昨日かれんは死んで、(これは、彼女のいた時間でいうところの昨日―― なんだか頭がぐちゃぐちゃになるけれど)でもまた、昨夜(これはこちらの時間)、またこの街に、ぐるりと戻ってきたのだと。
しれっと悪びれる様子もなく、軽々と――
少女が語った内容は、とてもじゃないけれど、
すぐには「そうだね」とうなずいて飲み込むには、あまりにも無理すぎる話でした。。
明らかにマンガの読みすぎ、アニメの見過ぎだと。
わたしは即座にそう断定せずには、いられなくて――
とてもじゃないけど、そのままその話を受け入れるとか――
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