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「まあもっとも、信じる必要もない。どうせおまえは、わたしが死ぬ直前まで、この話を本当には信じてはくれないだろう。だが、いつものことだ。驚かないし、失望もしない。だからここではこれ以上、むだに説明もしない。」
少女は、丘の下に川西の街を見下ろす高台の路地――
歩道の脇に設置された黄色の柵に座って、彼女の話をしめくくりました。
しめった初夏の風が彼女の髪をサラサラと揺すって吹き抜けていきます。
太陽はだいぶ西に傾いていました。でも、日が暮れるまでにはまだ少し時間があります。
遠くの道路をゆく車たちのブウウンというノイズ、それから、下校途中の中学生たちがたてる笑い声、それから、どこかの建築現場の重機の音―― そういった音がまとめてわたしの耳に届いて、そしてまた、風にのってどこか遠くに運ばれていきました。
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