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「…って、あのね、誰も上がってもいいとか、許可、出してないんですけど――」
家に着くなり、少女はサッと靴を抜いて家にあがりこむと、ずかずかとわたしの部屋の戸をあけて、勝手に入って、しかもなんだか、「勝手知ったるわが家」とでもいうように、制服のタイを解いて、ピンクのカーディガンをコートハンガーに引っかけ、シャツのボタンを二つほどゆるめて―― どさっと、ベッドの上に座り、そこにある新刊のマンガを勝手に読みはじめて――
「ん? どうした?」
「そ、それも、読んでいいとか、誰もひとことも――」
「ま、そう硬いことを言うな。親友だろう?」
「え、えっと。それ、そっちが勝手に言ってるだけで――」
「まあ、良いではないか。どうせ父親は海外出張で、当分は戻ってこないのだろう? もとより母親は離婚して、いないわけだ。同居の兄妹もいない。誰にも迷惑はかかるまい?」
「え?? ちょっ、なんでそんなことまで――」
「言っただろう。お前のことは、だいたいすべて把握している。何より二百回以上、繰り返しているのだ。今さら新しい要素など何もない――」
「もう! いいかげんにして!」
バサッ!
彼女の手からマンガ本を奪い取って、わたしは強い声で言いました。
「もう、帰ってくれない? ここはわたしの家。あなたの家じゃない。わたしあなたのことなんて、ぜんぜん、これっぽっちも知らない。記憶にもない。親友だなんて、勝手にそっちから言われても――」
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