2人が本棚に入れています
本棚に追加
夏
鼠色の空からポツリポツリと雨がふる。
「もー!また雨〜。」
隣で窓から空を見つめ、不機嫌に呟く彼女の声
「仕方がないだろ。雨が多い季節なんだから」
「だって…洗濯が乾かないから嫌なの」
むすっとした顔で、恋人の椿は言う。
「俺は雨好きだけど…」
「変わってるのよ大地は。」
「そう?雨は雨で良いこと沢山あるんだけどな」
例えばそう。水をやる予定だった、花壇に水を与えなくても良いとか。
家の中でダラダラする理由だって雨のせいにできる。
そしてさらに、雨が止んだ世界は、キラキラと輝いて見えるのだ。虹が空にかかり、雨の雫が光の反射で輝く。
些細な事だけど俺は雨が好きだ
「晴の方が何でもできるじゃない。髪だって湿気で変になる事は無いし。はぁ。早く止んでくれないかな」
雨続きで憂鬱なのだろう。
「明日には止むだろ?」
「そうだけどさ…」
久しぶりの晴れ間が見えるとニュースで話題になってたのだ
「ああ。何か良いことでも有れば気分が上がるのに」
まるで俺に何かを求めるように目線を配る
「そうだな…」
なんて答える。
「まぁ冗談なんだけどね」
明らかに落胆したように窓の外を見つめて言う彼女に対して、俺の心はザワザワと騒ぎ立てていた
最初のコメントを投稿しよう!