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 大草原の真ん中にひとつのテーブルがあった。黒くて頑丈そうなテープルには真っ白なクロスが敷いてあった。そしてそのテーブルの向こう側、僕の正面にひとりの髪の長い女性が座っていた。  僕の心臓が高鳴った。誰だろう? 僕はひとりごちると無意識のままに立ち上がっていた。僕はまるで女性に導かれるかのように、ゆっくりと歩きだした。  ああ、どうしたことか、僕の目の前にあったバス道りは消え去り、そこに一本の美しい小川が流れていた。小川の水面が太陽の光を受け、まるで宝石のように輝いている。僕には水の粒子のひとつひとつが、はっきりと見えた。  透き通る水流は、生命力に満ちていた。それはまるで女王の柔らかな金髪のように、たゆたう壮麗な流れだった。  僕は迷うことなく小川のなかに足を踏み入れた。あたたかい……、僕の躰全体に太陽の光が駆け巡った。そして柔らかな水の粒子が僕を浄化した。
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