エピソード2.天の声のお仕事事情

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エピソード2.天の声のお仕事事情

 私のお仕事はパートナーから預けられる主人公たちを生きて英雄なさしめること。彼らは様々な世界からやってくる。彼らにとって異世界の分類である他の世界。そこへ行くには私のパートナーの一人にまず好かれなくてはならない。無論、その人物に合うことができるのは、死んだ人間か他世界からの召喚が合った時のみ。  何をやれば好かれるのか? といのは、ぶっちゃけわからん。その仕事を請け負うパートナーを主は“選択者”と呼ぶ。召喚の時も含め、誰を異世界に飛ばすか選ぶ存在のこと。私のパートナーの選択者は今までの人たちから察するに優しくて、どこか犬っぽい人を好んでいるように思う。  選択者から選ばれた人間は次に他世界へ移動するための手続きを行う。手続き、なんて人間がめんどくくさがる言い回しはよそう。簡単に言うと聞かれた質問に答えればいいだけ。あとは“判断者”に任せれば大丈夫! ここでは主に他世界での名前、使う能力の設定、あとはその世界での役割を説明される。けれど、最近流行っている世界の平均能力からはずれた異常能力を求めたり、さほど語彙力もないくせに皆からモテモテ! などという設定を盛り込んできたりすると判断者が大変な思いをしてしまう。  判断者は私たち導き手と選択者たちとh違い、文明や歴史を持つ。集団で生活し、互いに寄り添いながら生きている。そう、んだ。彼女たちには寿命がある。それも主が創られたのだ。大抵人間の時間で二十億年程度の寿命が存在し、判断者たちは残りの時間を確認できるようになっている。  さっき、設定過剰は判断者を困らせるといったでしょう? その理由が寿命にある。判断者は選択者が選んだ人間たちに、今まで備わっていない力を与えるために自分の命の時間を譲渡しなくてはならない。身に覚えないかな、できないことをできるように時間を費やしたこととか、あるんじゃない? 判断者はその人の身体能力やさまざまな力に応じて寿命を奪われる。その人が力を得るまでにかかる時間を判断者たちが代わりに減らさなくてはならない。  そんなこんなでやってきた人たちを今度は私たちがサポートする。自分の居た世界から、異世界へ降りたって初めて主人公の名を得ることができるというわけだ。  彼らの情報は判断者がまとめてくれる。私の居る場所まで運ぶのは“運び屋”のお仕事。けれど、選択者も、判断者も、私も運び屋の姿を目にしたことが一度もない。赤いポストに資料や手紙を送ると、相手に届く。もしかしたら視認できない存在なのかと最近感じ始めている。  私の仕事部屋は八畳程度の殺風景な空間だ。私はこの部屋以外、パートナーとお茶会を開く茶会の間しか世界を知らない。というか、いけないんだ。部屋には扉があるけれど、そこを出ると光に包まれて気づけば茶会の間に立っている。加えて言うと、私は同じ導き手と会ったことがない。が、しかし導き手が他に存在することは疑っていない。主に創られたとき、他にも導き手が居ると諭されたのだろう。  窮屈だと思うでしょ? だけどね、案外そうでもないのよ。主人公たちが元居た世界で好きだった食べ物を聞いて、運び屋に手紙を書いて持ってきてもらう。自分にも味覚があるんだと驚いたけど、彼らと同じ感情を共有するのも、面白い。  最初に食べたのは、アレだ。わかる? パリパリッとしてて、炭酸飲料によく合って、油がのってるアレ。その名も、ポテチ‼
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