エピソード1.声の正体、ご紹介

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 エピソード1.声の正体、ご紹介

 初めまして。。私は貴方の案内役兼、サポートを務める者です。以後、何かお困りの際はお呼びください。  と、まあこれが私の挨拶というもの。多くのに出会う中で私が身に着けた礼儀作法の一つ。まだ世界になじめない彼らを支えるため、私は彼らと友好関係を築くべく最初にこの言葉を選ぶ。ああ、勿論だけど初っ端から死の境地に立たされている場合は挨拶どころじゃないからサポート優先だけれどね。そこらへん、臨機応変にね!  ところで、先の挨拶を行うと百パーセントこの質問を投げかけられる。  「で、名前は?」  主人公に限らず人という存在は名前を重視する傾向があるらしい。その証拠に彼らは全員名前を持っている。両親という者が彼らの誕生と未来の生命を祈り、名付けるのだという。最近では自分の名前に不服を漏らす主人公もいる。そういう人たちは二人いる私のパートナーの一人に頼んで名前の変更を行う。  一方の私は……。  「名乗れる名前はございません」  そう、私には両親が居ない。兄弟も、家族も居ない。ならばどうやって誕生したのか? お答えしようではないか。私たちはによって創られた存在である。故に名前は存在しない。それどころか空腹も感じず、体型も変わらない。しかも主のお怒りに触れない限り生命に終わりがない。  私が授けられた肉体は女性のものだ。膨らんだ柔らかい胸が……おっと、これは脂肪だ。気を取り直し、胸と、しなやかな曲線と、美しい声が自慢。すべて主の手で創作された物だ。  創られた以上、私たちには仕事がある。それが最初の挨拶にある通りの「案内兼サポート」である。そして、彼らの大半は声のみでしか存在がわからない私たちをこう呼ぶ。  天の声。と。  ま、なかなよろしい名ではないかな? 実際には主の授けた仕事名“導き手”があるのだがこの名前も悪くない。だから、初めて会う主人公が私の呼び方に窮しているときは「天の声、とでもお呼びください」なんて気取っていってみたりする。
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