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special short・1《チョコとサンタとクリスマス》
「おお、美味そうだな…!」
白い箱を開けた途端、祖父が嬉しそうな声を上げる。箱の中身は、クリスマスケーキだ。
辻村オススメの店で予約したクリスマスケーキは、直径15cmほどの小振りなサイズだが、中にも上にも“これでもか!”とばかりに、まるごとの苺が使われた、贅沢なショートケーキだった。──辻村家では、定番のクリスマスケーキらしい。
ケーキ屋のショーケースの横に置かれた、クリスマスケーキのチラシには、色とりどりのフルーツが乗ったタルトや、大粒な栗の渋皮煮がたっぷりのモンブラン、定番のブッシュ・ド・ノエルなどがあった。
──僕としては、チョコレートクリームでデコレーションされた、甘さ控えめなブッシュ・ド・ノエルが良かったんだけど…。
『何言ってるの、紺野くん! 絶対、こっちのショートケーキだってば! ホントに、ビックリするくらい美味しいから! クリスマスには絶対、ここの苺のショートケーキが一番よ!』
ショーケースの前で、派手に身振り手振りをつけて、辻村が説明してくれたのを思い出す。…店員や他の客に注目されて、ちょっと恥ずかしかったことも、ついでに思い出す。
予約をしたのは先月だが、その日は僕以外にも、数人の客がクリスマスのショートケーキを予約していった。…辻村ほどの美少女になると、その熱弁は時に、世界も動かすらしい。
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