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special short・1《チョコとサンタとクリスマス》
テレビから、控えめな音量でコマーシャルが流れるのを聞きながら、僕は食事の支度に取りかかる。──綛谷が、うどんがいいと言うので、夕飯の残りの天ぷらと合わせて、鍋焼きうどんを作ることにした。
先日、特売で買っておいた冷凍うどんを使うので、手間もかからない。くつくつ煮えたうどんの上に具材をのせ、仕上げに卵を落としたら、素早く蓋をして、余熱で火を通す。…綛谷の前に出す頃には、ほどよい半熟になるだろう。
1人用の土鍋を載せたトレーを居間のこたつまで運ぶと、綛谷はテレビの画面を食い入るように見つめていた。
「綛谷、できたぞ」
「わー、鍋焼きうどんだー。いただきます♪」
まだ赤みの残る頬を嬉しそうに緩め、パキッと小気味良い音を立てて箸を割った綛谷が、ホカホカ湯気を立てる鍋焼きうどんを食べ始める。
「…何、見てたんだ?」
訊ねながら、綛谷の前に七味の小瓶を置いてやると、箸の先でカマボコを摘まんだ綛谷が、ああ、と思い出したように声を上げた。
「ああ…別に、大したことじゃないんだけどさ。──多分、紺野は似合うだろうなって」
「似合うって何が?」
再度訊ねたら、カマボコをかじった綛谷が、口をもぐもぐさせながら、テレビを指す。…今日はクリスマスイブだからか、サンタ風の衣装に身を包んだアイドルが、画面の中で歌い、踊っている。
「ミニスカサンタ。紺野、絶対似合──イテッ!!」
最後まで聞かずに、思い切り、綛谷の頭を叩いてやった。
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