それでも恋をする

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「先生、これ……」  前期入試も終わり、卒業式まであと二日という日。私はまたも先生の作業を手伝っていた。  でもこれはどう考えても。 「あの、これ、私も貰うものですよね? それなのにリボン結び、手伝うんですか?」  どうやら先生は卒業する私たち一人ひとりにメッセージを渡そうとしているようだった。そのメッセージカードのリボン結びを手伝うことになるとは。 「うん。だから中身は見ちゃダメだぞ?  昨夜遅くまで書いて流石に疲れたよ。 リボン結ぶようなことは、女子の谷川の方が上手かなと思って」 「だとしても、私だってサプライズで貰いたかったです」  呆れながら言うと、先生はごめんごめんと笑った。 「最後の手伝いだよ。よろしくお願いします」  私はもくもくと作業をしながら、一つのことを考えていた。  私はこのままでいいのだろうか。ずっと可愛くないまま、先生に本音も伝えられずに卒業するのだろうか。そんなの悲しい。絶対後悔する。今日だけでも素直になりたい。  リボンの数が減っていく。先生との時間も同じようにあと少し。考えると心臓が段々早鐘を打ち出した。このままでいいわけない。素直に。素直にならなきゃ。素直に、なりたい! 「せん……」  顔を上げて高田を見ると、先生は眠ってしまっていた。なんとなく安堵のため息が出た。先生の寝顔はやっぱり可愛かった。ずっとずっと見ていられたらいいのに。  私は結び終えたリボンを置くと、しばらく、先生の寝顔を見ていることにした。いつまでもこの時間が続けばいいのに。私は机に頬杖をついて、先生の寝顔を飽きもせずに見続けた。  窓から見える空が橙に染まっていく。先生が風邪をひいてはいけない。私は仕方なく先生を起こすことにした。
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