17人が本棚に入れています
本棚に追加
「先生、これ……」
前期入試も終わり、卒業式まであと二日という日。私はまたも先生の作業を手伝っていた。
でもこれはどう考えても。
「あの、これ、私も貰うものですよね? それなのにリボン結び、手伝うんですか?」
どうやら先生は卒業する私たち一人ひとりにメッセージを渡そうとしているようだった。そのメッセージカードのリボン結びを手伝うことになるとは。
「うん。だから中身は見ちゃダメだぞ? 昨夜遅くまで書いて流石に疲れたよ。
リボン結ぶようなことは、女子の谷川の方が上手かなと思って」
「だとしても、私だってサプライズで貰いたかったです」
呆れながら言うと、先生はごめんごめんと笑った。
「最後の手伝いだよ。よろしくお願いします」
私はもくもくと作業をしながら、一つのことを考えていた。
私はこのままでいいのだろうか。ずっと可愛くないまま、先生に本音も伝えられずに卒業するのだろうか。そんなの悲しい。絶対後悔する。今日だけでも素直になりたい。
リボンの数が減っていく。先生との時間も同じようにあと少し。考えると心臓が段々早鐘を打ち出した。このままでいいわけない。素直に。素直にならなきゃ。素直に、なりたい!
「せん……」
顔を上げて高田を見ると、先生は眠ってしまっていた。なんとなく安堵のため息が出た。先生の寝顔はやっぱり可愛かった。ずっとずっと見ていられたらいいのに。
私は結び終えたリボンを置くと、しばらく、先生の寝顔を見ていることにした。いつまでもこの時間が続けばいいのに。私は机に頬杖をついて、先生の寝顔を飽きもせずに見続けた。
窓から見える空が橙に染まっていく。先生が風邪をひいてはいけない。私は仕方なく先生を起こすことにした。
最初のコメントを投稿しよう!