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scene:02《象牙色の眩暈》
「そうは言ってないだろ。──ただ、誤解してるみたいなんで言っておくけど、誘ってきたのは新川の方だから」
「誘ったのが新川だとしても、誘いに乗った時点で、お前も同罪だ!」
「同罪って…オレ、そんなに悪いことしてるかなあ?」
立てた片膝に額をつけるように俯き、クックッと、こみ上げてくる笑いをこぼす。
「…手当たり次第に関係を持つなんて、誰がどう見たって不誠実だろ! 自分がしてることに、真紘は罪悪感とかないのか!?」
…ああ、いかにも颯希らしい台詞だ。
“冷静沈着”
“品行方正”
それから──“清廉潔白”
そんな颯希に、真正面から不誠実だと糾弾されると、まるで自分が“穢いもの”になったみたいに感じる。
…いや、実際に穢いのか。
血の繋がった兄弟──それも、自分と同じ遺伝子を持つ双子の兄に、どうしようもなく欲情するような、オレは。
…でもな、颯希。
オレにはもう、お前の言う“罪悪感”なんて、無いんだよ。
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