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scene:02《象牙色の眩暈》
我が家のリビングに飾られた、数枚の家族写真。その中で、子供の頃のオレと颯希の傍らに写る、少年っぽい姿の幼なじみ。
市橋せりか。
4年前、この家に越してくるまでは、毎日一緒にいた幼なじみと、高校で再会。
優等生同士で“理想的”だという、周囲の期待に応えるかのように、二人がつき合うようになるのに、それほど時間はかからなかった。
──高等部の入学式の日、屈託のない笑顔でオレ達の前に現れた、せりかの姿を思い出す。
オレ達の通う白鳳学院への高等部からの編入は、中等部受験よりも数段難易度が高く、しかも募集人数も少ないから、毎年、かなりの倍率になる。
だから、せりかがその難関をくぐり抜け、高等部へ編入できるほどの実力を持っていたことに、オレも颯希も心底驚いたのだけども──そんな驚きを凌駕するほど、ハッキリと感じた、胸が悪くなるような、嫌な予感。
──忌々しい。
舌打ちしたい気分で颯希を見れば、その表情は“どうしてわかったんだ”と言いたげに目を見開いたまま固まっていて、オレは暗く笑う。
「──なぁ、颯希。その細い腰で、どうやって、せりかとヤった?」
「…っ!」
嘲笑うように言うと、颯希の象牙色の肌に、サッと赤みが差した。
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