scene:02《象牙色の眩暈》

1/1
前へ
/504ページ
次へ

scene:02《象牙色の眩暈》

   「…ああ、だからかな」  クスリと笑って立ち上がると、オレは殊更ゆっくり、颯希へと近づいた。  「やっぱり双子ってさ、どっか感覚とか、繋がってんのかも。…なぁ、颯希も、そう思わなかった?」  ソファの上で硬直する颯希の方へ、腕を伸ばし──背もたれに手を置いて、颯希を囲いこむ。  「オレ、別に新川になんて、何の興味もなかったんだけどさ…」  自分の腕で作った檻の中にいる颯希を、至近距離で見下ろす。  ピリピリと、皮膚の上で火花のように戦慄が走る。  ──ああ、これは、今まさに颯希が感じている、オレへの恐怖だろうか。  同じなのに同じじゃない──オレよりずっと繊細な顔立ちが、青ざめながら、オレを見上げている。  そんな颯希を、さらに追い詰めるように、形のいいその耳元へ、顔を近づける。  「──今日は、やけに興奮した」  誑かすように囁き、オレは、颯希のまっさらな黒髪をさらりと掬った。            【scene:02 End】
/504ページ

最初のコメントを投稿しよう!

579人が本棚に入れています
本棚に追加