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scene:02《象牙色の眩暈》
「…ああ、だからかな」
クスリと笑って立ち上がると、オレは殊更ゆっくり、颯希へと近づいた。
「やっぱり双子ってさ、どっか感覚とか、繋がってんのかも。…なぁ、颯希も、そう思わなかった?」
ソファの上で硬直する颯希の方へ、腕を伸ばし──背もたれに手を置いて、颯希を囲いこむ。
「オレ、別に新川になんて、何の興味もなかったんだけどさ…」
自分の腕で作った檻の中にいる颯希を、至近距離で見下ろす。
ピリピリと、皮膚の上で火花のように戦慄が走る。
──ああ、これは、今まさに颯希が感じている、オレへの恐怖だろうか。
同じなのに同じじゃない──オレよりずっと繊細な顔立ちが、青ざめながら、オレを見上げている。
そんな颯希を、さらに追い詰めるように、形のいいその耳元へ、顔を近づける。
「──今日は、やけに興奮した」
誑かすように囁き、オレは、颯希のまっさらな黒髪をさらりと掬った。
【scene:02 End】
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