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scene:03《真夏の陽炎と見えない痣》
「──なぁ、颯希。その細い腰で、どうやって、せりかとヤった?」
「…っ!」
あまりにも露骨で、直截すぎる真紘の言葉に、声が出せなくなる。
なぜ、そのことがわかったのか──自分に、何か落ち度があっただろうかと、混乱する頭で考えていると、真紘が静かに立ち上がった。
真夏の陽炎のように、真紘の輪郭がユラリと揺らいで見える。
「…ああ、だからかな」
ゆっくりと近づいてくる、真紘の影に覆われる。
「やっぱり双子ってさ、どっか感覚とか、繋がってんのかも。…なぁ、颯希も、そう思わなかった?」
暗い影から伸びた腕が、僕の退路を断つようにソファに置かれ、立ち上がることもできない。
背後から喉元へ、刃の切っ先を突きつけられたかのように、心臓が緊迫に脈打つ。
「オレ、別に新川になんて、何の興味もなかったんだけどさ…」
至近距離で、僕を見下ろす真紘の瞳。冷たそうに見えて、実は赤よりも熱い──それは、青い炎だ。
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