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scene:04《鶴の一声と冷たい空気》
† † †
年が明け、短い冬休みも終わった、1月の午後。
「──堂園」
忙しさのピークが過ぎたバイト先のカフェ“glory hole”の厨房で、先輩スタッフで厨房のチーフでもある、辻村誓志…通称・チカさんと雑談しながら、賄いのサンドイッチを作っていると、このカフェの店長で、密の2番目の兄でもある、久我原誉さんが顔を出した。
「はい、何ですか?」
「それ終わったら、ちょっとカウンター入ってくれ」
「わかりました」
コンビーフと刻んだポテトを混ぜた、スパニッシュ風のオムレツを具にしたサンドイッチを手早く盛りつけると、オレはタブリエの紐を結び直し、皿を片手に厨房を出る。
ヘルプに入るほど忙しい訳でもないのに、何だろう…と、不思議に思いながらカウンターに入ると、すぐにその理由がわかった。
「よう、働いてるか?」
気さくな笑顔とともに、片手をヒョイと上げたのは──このカフェのオーナーで、密の1番目の兄でもある、久我原祐さんだ。
「…お陰様で」
祐さんに小さく頭を下げると、オレはこれから休憩に入る先輩スタッフに声をかける。
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